Hampstead Heath駅(オーバーグランド線)から徒歩5分のところに、「2 Willow Road」がある。
閑静なビクトリア時代の家が並ぶハムステッドの通りには、ややそぐわないかとも思われるグレーのコンクリートの柱が正面に使用された四角いブロックの家は、一見あまり目を引かず、つい通り過ぎてしまう。
Erno Goldfinger(アーノ・ゴールドフィンガー)という1930年代以降に活躍した建築家の自宅だったこの家は、現在ナショナルトラストが保護、先週、偶然前を通った日曜日、お昼に思いつきで時間ツアーに参加、10年越しの初めてのうれしい入館達成。
1939年に建設されたこの家は、まだアールヌーボーが色濃く残る時代に反して作られた、すべてがシンプルでモダン。つい近年作られたといわれておかしくない近代スタイルだ。各所に部屋を大きく、または小さくできるパーティション式のドアがあり、当時の西洋では珍しい引き戸スラインディングドア(障子のような)が賢く使用されていることも特筆するべきところ。床レベルの低い独自デザインベッドといい、東洋からの影響も受けていると思うのは私だけだろうか。
家具は無く、すべて作り付け。そのシンプルで、しかも素材の木製と金属の組み合わせ、古い伝統と、プラスティックのモダン素材の組み合わせ。50年代、60年代のアンティーク家具好きにはたまらないインテリアで埋まっている。
この近未来的なデザインは、宇宙船が月に到着した60年代から世界で始まったのだが、彼はその近未来手的なシンプルなデザインを1939年に取り入れたこのゴールドフィンガーがいかに通常の人よりも先見の目とセンスを持っていたかがわかる。流行より20~30年早すぎた、その彼のモダンなデザインは、1940年代当時、人々には到底受け入れられなかった。
壁やキャビネットに並ぶ美術作品は、著名な美術家の作品群。ヘンリームーアの作品などすべて友人だったというから時代を実感させられる。
ちょっと気難し屋で頑固者だった半面、無類の社交家でパーティ好きだった彼のこの家で、120人が招待されたパーティ、夕食パーティが頻繁に行われていたそうだ。
上階から見下ろす、巻貝のようなスパイラル状の階段の手すりがある。トップフロアから下を見下ろすと1階のフロアーが見える。入ってくる時に玄関フロアに無造作に置かれたブラウンの靴が不自然で、なんでこんなのが?と会話をしていた。
上階から見下ろすその巻貝の中のちょうどいい位置にその靴がまるで丸い額縁が付いた絵画のように置かれていることを発見する。
この家にあるものは、「すべてが計算づくめ」だそう。
開館水、木、金、土、日 決まった時間に解説ツアーが出る。入場料6ポンド
詳細は、http://www.nationaltrust.org.uk/2-willow-road/visitor-information/
(※現在は写真の撮影は禁止されているので、ネットブログからお借りした。)