「いい人は早死にするっていいますから、もっと悪いことして長生きして下さいよ。」
今年2014年の2月にロンドン旅行に来られた素花さん。個人ガイドのお申込みとしては最長の9日間を同行させていただいたお客様。はく離骨折を2週間前にしたばかりで、医者からはよくこの状態で、とあきれられて来たとロンドンに来られた素花さん。
お話が楽しくて、中国人の振りをしてたくさんの人を信用させる特技と笑いで、人を魅了することが得意の素花さん。
初対面の皆が、ついつい自分の打ち明け話をしてしまう魔法を持っている素花さん。
不幸な生い立ちで、子供の頃からずっと一人で生きてきて、はじめての孫が生まれたとき、「こんな僕に孫ができるなんて」この子のために生きようと、腎臓移植を決心された素花さん。
「どうにかなるだろう」と貯めたお金で1970年代にアメリカに行き、「どうにもならなかったね。」といいながら、メールボーイをしていたニューヨークで、商社の本社のボスから採用され、3年後に日本支社の副社長になった素花さん。
29歳で企業して、経営する17社の福祉サービス、保育園は、不幸な子供や人を救う仕組みになっている素花さんの会社。
毎日70枚のカードを手書きされ、旅先からも社員の誕生カードを忘れない素花さん。
8月に日本から届いたカードを出されたすぐ直後に脳梗塞で亡くなられたらしい素花さん。
遅すぎた10月の返信に、返事が無くてわかったこのニュースは、後悔とともに、またカードが届きそうな気がして、地球の反対側にまだいらっしゃるような気がしてならない素花さん。
私も、素花さんの冗談に魅了されたそのうちの一人で、きっと、カナダのガイドの人や治療した病院の人や、中洲の女性たちや、採用された社員の人や、最愛のお孫さんや、たくさんのたくさんの人が、私と同じように悲しんでいらっしゃることでしょう。
「いい人は早死にするっていいますから、もっと悪いことして長生きして下さいよ。」
あまりにも、気前のいい、思いやりのある人柄につい冗談で言ったこの言葉が、「だから言ったでしょう」。
享年62才。ご冥福をお祈り申し上げます。
追記、2014年にロンドンに訪れられた2か月後の5月に、カナダの2週間旅行に行かれました。まるで生き急いでいらっしゃるように、見ていないものを急いで見るかのように。ご本人も、ご家族もきっと終わりが近づいていることをご存じだったと察します。
近親ご家族の方たちのお心の痛みに、謹んでお悔やみ申し上げます。