今現在、日本で映画公開されているらしい、コンピューターの原型を作り、第2次大戦中にドイツ軍の難解な暗号エニグマを解析したことで知られているアラン・チューリングの話、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(イギリスでの公開は1月)
映画はドイツの暗号エニグマの解読に挑むシーンを中心に進行するのですが、原題のタイトルでもある「イミテーション・ゲーム」は暗号解読のことを言っているわけではなく、人工知能の父と呼ばれるチューリングが考案した、機械が人工知能と言えるかどうかを判定するチューリングテストを意味しています。しかし、この映画が本当に伝えたいことはほかにあったようです。
それは、この映画の脚本家の感動的なスピーチでわかります。これを読んでちょっと涙ぐんだ私です。
グラアム・ムーアのこのスピーチは、ビジネスインサイダー他で、もっとも印象深いスピーチとして語られています。
「こんな話があります。アラン・チューリングがこのような舞台に立って、そしてこのような魅力的な皆さんを見渡すことはありませんでした。しかし私はしています。そしてこれは、私の知る限り最もアンフェアなことです。つまり、この短い時間に私が言いたかったのは、このことなのです。
16歳のとき、私は自殺しようとしました。自分が変だと感じ、自分が他人と違っていると感じ、そして、自分はどこにも属さないと感じていたからです。そして、いま私はここに立っています。この瞬間を、自分が変わっている、自分は他人と違う、自分にぴったり合う場所はどこにもないと感じている子供たちと思いを同じにしたいと思います。君たちには(どこかに)合うところがある。必ずあると私が保証します。
ステイ・ウィアード、ステイ・ディファレント、そして、あなたの番が来たら、あなたがこの舞台に立つ時が来たら、どうか同じメッセージを次に続く人に渡してください。ありがとうございました!」
"Here's the thing. Alan Turing never got to stand on a stage like this and look out at all of these disconcertingly attractive faces. I do. And that's the most unfair thing I've ever heard. So, in this brief time here, what I wanted to do was say this: When I was 16 years old, I tried to kill myself because I felt weird and I felt different, and I felt like I did not belong. And now I'm standing here, and so I would like this moment to be for this kid out there who feels like she's weird or she's different or she doesn't fit in anywhere. Yes, you do. I promise you do. Stay weird, stay different, and then, when it's your turn, and you are standing on this stage, please pass the same message to the next person who comes along. Thank you so much!"
(『“This unsuspecting Oscar winner gave the most inspiring speech of the night”, Business Insider, 2015/2/23』より抜粋。)
この映画の主人公アラン・チューリングは、同性愛者でした。当時ゲイでいることは、映画を見てもわかるよう犯罪行為であり、「治療」するべきことでした。きっとこの感動的なスピーチをした脚本家グレアム・ムーアも同じ悩みを抱えていたのかもしれません。
しかしゲイであることでなくても、普通でないこと、なにか抜きん出ていること、尋常でないことは、日本では奇異に受け止められる「同調圧力」があり、「出た杭は打たれる」文化があるのが残念なことです。
Stay Weird, Stay Different. 「変であれ、他と違っていろ。」
(これは、スティーブ・ジョブズの、Stay Hungy, Stay Foolish にかけていることもわかります。)
時代が変われば、人間の価値観も大きく変わり、また、住む国が変われば人々の行動も、考え方も変わります。ゲイであることは犯罪であった当時、世界の先進国ではゲイ同士の結婚も法的に認められる時代になった現代。私は同性愛者ではないけれど、「おまえ変わってるね」とよく日本で言われ、血液型がABというだけで変わり者扱いされていた私の日本での生活。
イギリスに来て「変わっている」と言われたことは一度もない、まして血液型を聞かれたこともないこのイギリス、ここ他国籍人種が住むロンドンが、自分と違ったものを認め尊重する社会が、私になんと居心地の良い環境を与えてくれるか計り知れません。
悩んでいる日本の子供たちにも伝えたい、大きくなったら、世界に出たら、きっとあなたに会う世界があるのです。
自分の価値観を大事にし、自分を強く持ってほしい。